映画の未来は、すでに始まっている
『ストーリー・オブ・フィルム 111の映画旅行』は、映画の進化を独自の視点で語ってきたマーク・カズンズによる新章。2021年に発表され、前作『ストーリー・オブ・フィルム:映画の歴史』から約10年ぶりとなる本作では、2010年代から2021年にかけて生まれた111本の作品を取り上げ、世界中の映画の潮流と変革をめぐる旅を続ける。映画はどこから来て、どこへ向かうのか。パンデミック、AI、ジェンダー、ポストヒューマン……あらゆる視点が絡み合う映画の現在地がここにある。
それは、映画という宇宙の現在地
このドキュメンタリーは、ジャンルや国、製作規模にとらわれず、映画史に新たな問いを投げかけた111本を通じて、現代映画の革新性と可能性を映し出す。
マーベル映画や『ジョーカー』のような大作から、アフリカやアジアのインディペンデント作品、そしてVRやAIを用いた作品まで、語り口は一貫して映画への愛に満ち、同時に鋭い批評精神を失わない。変わりゆく時代において、映画はどのように人間の内面と社会を映し出すのか――旅の行き先は、私たち自身の未来でもある。
映画という「問い」に寄り添う旅
『ストーリー・オブ・フィルム』シリーズの特長は、マーク・カズンズの語りにある。情熱的で詩的、そしてときに挑発的。彼は映画を「正解を与えるもの」ではなく、「問いを投げかけ続けるもの」として捉える。
この新章では、ポスト・パンデミック時代の映像表現、AIとの共存、ジェンダーの揺らぎ、そして非西洋的な視点を積極的に取り込む。印象的なのは、大作映画もインディーズ作品も同じ眼差しで扱われている点だ。たとえば、マーベル映画の中にさえ「記号を超えた人間性」を読み取る視線。これは、カズンズの映画愛の真骨頂とも言える。
一方で、鑑賞する側にはかなりの映画リテラシーが求められる。編集も淡々としており、ナレーションの哲学的な語りに追いつけない瞬間もある。しかしそれは、「映画の旅に同行する者」としての覚悟を試されているようでもある。
取り上げられる111本のうち、知らない作品も多く、視野が一気に広がる。このドキュメンタリーは単なる総括ではなく、未来の映画作家たちに向けた、静かなエールだ。
映画の終わりではなく、始まりを告げる作品
『ストーリー・オブ・フィルム 111の映画旅行』は、まさに「映画の教養」というより「映画の旅の同伴者」として機能する。どれだけ技術が進歩しても、映画が人を感動させる本質は変わらない。それは人間を見つめる力だ。
今、何を観るべきか?
これから、何を作るべきか?
答えはない。ただ、この映画を観た後なら、問いの立て方が変わっているはずだ。
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